モーニングで連載中の原作・漫画:ヨンチャン、原作:竹村優作による社会派漫画です。
今年も引きこもりの夏休み、神保町の三省堂書店で見かけてずっと気になっていたのですが、数回本屋を訪れてなお気になる気持ちを抑えきれずに最新9巻まで大人買いして一気読みしました。
大学病院で研修中であった小児科の研修医・遠野志保は、遅刻や忘れ物の常連で、必ず1日1つは失敗をする、という問題行動の多いことで、指導医の山崎からもしばしば怒られ通しの日々、ついには「小児科医はあきらめろ」とまで言われる始末。そんな志保を、小児科の研修期間修了後に唯一引き受けてくれたのが、地方にある児童精神科の「佐山クリニック」。志保は、ここで出会った風変わりな院長・佐山卓らと共に、様々な心の闇を抱えた子供たちと向き合うこととなる(Wikipediaより引用)。
遠野志保も狭山卓も、発達障害を持っていることを作中でカミングアウトしています。
作中では、発達障害を凸凹(でこぼこ)と呼んでいます。IQテストでは、「言語理解」、「知覚統合」、「注意記憶」、「処理速度」の4項目を測定するのですが、そのチャートのバランスが悪いと、総合IQが高くとも日常生活を送る上で支障をきたすことがあるのだそうです。
チャートのバランスの悪さを、作中では凸凹と表現しています。志保も卓も医学部、医師国家試験に合格しているので全体的な知能は高いと思われるのですが、例えば志保の場合は、「注意記憶」の項目が他の項目と比べて低く(たとえその項目が全体平均である100より高くとも)、日常生活に困難を感じているので発達障害と診断されています。
一方で、周囲の理解やサポートがあれば、日常生活の困難を少なくし、持っている個性や能力を発揮していけることもメッセージとして強く押し出されています。
育児をしていると、子供の発達は常に心配の種ですが、発達障害の有無に関わらず、子供の心理を理解する一助になるようなエピソードが満載で、いちいち心に刺さりました。
また、発達障害を抱えている子供だけではなく、彼らを取り巻く大人たちの心情も丁寧に描かれています。「普通」と認識している(されている)人でも、リエゾンの各エピソードのうち、何かしら心に響くような台詞があると思います。
障害を持って生きることの苦しみを本当の意味で理解することは出来なくとも、実際にこういうことで苦しんでいるんだということを知るだけで、当事者の方々がよりよく生きることができるのではないかと思えました。
重たい内容のものもありますが、基本的にはどのエピソードもハッピーエンドないしはハッピーエンドを示唆する爽やかな終わり方です。
現実は全てのケースがうまくいくとは限らないと思いますが、ハッピーエンドがベースになっていることで、重くなりすぎずに安心して読み進められると思いました。
他人と比べてより良い学歴、年収、社会的ステータスを目指して、次から次へとより高みを目指すことを焚き付ける現代社会において、大人だけではなく子供たちも精神的に疲弊することも多いと思います。育児で悩んでいる方のみならず、児童精神科は自分には関係のない世界だと思っている方も一読の価値ありの内容だと思いました。
ところで、原作者のヨンチャン氏は韓国出身の漫画家だそうです。日本で漫画家デビューすることが夢で、1年間念願の週刊連載を持ったものの、あまりの忙しさに社会と切り離されてしまう感覚に陥ったそうです。
「リエゾン」の企画が上がったときに、これならば漫画を通して社会貢献ができると感じたそうで、連載にあたって、児童精神科への取材だけではなく、子供と関わるためのアルバイトまでしたことが記事で語られていました。その並々ならぬ意欲に、読者として感銘を受けました。そして、ヨンチャン氏が日本でデビューしてくれたことも嬉しく感じました。