渋沢栄一の論語と算盤、大河と新一万円札ブームもあって、まずは漫画版を読んでみました。
論語と算盤
全体的な感想
率直に、一時のブームに留まらない渋沢栄一の生き方に感動し、最後は目から汁が出てきました。論語=道徳(社会福祉、社会貢献)と、算盤=経済的成功は両立可能だと言うことを示したバイブル、宗教が身近でない日本人には、しっくりくる本と思いました。
知・情・意
人間として持つべき3指標「知(智力)」「情(良心)」「意(意思)」のバランスの話、渋沢流人物観察方法「視る(その人の行動)」、「観(行動の動機)」、「察(その人が何に満足しているか)」は、その人の器なりに、慕われ、頼られ、協力を得ながら、志高く生きて行くためにはどうすれば良いか、を伺い知ることができます。
渋沢栄一の略歴と人柄
渋沢栄一は、豪農、尊王攘夷志士、幕臣、パリ留学からの大政奉還、官僚、実業家という、経済的、社会的に成功した偉人という面は有名ですが、福祉活動に最も力を入れていたことを初めて知りました。
会社で働く人と株主が利益を得て、ひいては社会全体の利益となる、という望ましい資本主義の在り方を日本に広めたのがこの人です。パリ留学中に大政奉還の知らせを受けて大慌ての幕臣に、コツコツ買ったフランスの株や債券の配当で当面の生活費は何とかなりますから安心してください(ドヤァ)のシーンは、FIREの先駆けとも言える印象的な場面です。
社会福祉の合理性
お金持ちの心理・見栄(ノブレス・オブリーシュ的な?)を利用して富裕層から社会福祉のための寄付金集めに精を出していましたが(税金で福祉を維持する政策が認められず、民間で資金を集めることにしたため)、この人に言われると協力してしまう、と言う愛嬌と圧があったようです。資本主義の歪みは治安の悪化や国力低下に繋がり、長期的な社会の利益に繋がらない、という超合理的な考え方でもあります。最強の強かさです。
山縣有朋や豊臣秀吉が瞬間最大風速的に権力を手にしても長続きしなかったことは、情が足りて無かったから、と説明されてます。正義は多面的で、その時代、どの側から見るかで変わりますが、亡くなった時にどのくらいの人が悲しんだか、亡くなった後の人気とか、それは人柄や生前どれだけの人を幸せにしたとかによるところが大いにあるのかなと。
まとめ
色々なビジネス書や啓発書があり、学ぶ面は多々あっても、痛みを伴ったり、少なからずモヤモヤすることがあったりするものですが、ここまで心にフィットする本は中々ない気がします。
遺産相続問題も起こさず、GHQにも財閥認定されず、三井・三菱らの財閥解体のタイミングで自ら財閥を解体するとか、女性関係にだらしがないと言うエピソード以外で、死後もカッコ良すぎて突っ込む点が見当たりません(それが完璧ではない人間らしい点なのかも?)。髭のないツルッとした顔だから偽造防止に向かないと言う理由で当時はお札に採用されなかったけれど、技術が発達して満を持しての一万円札採用も、大河ドラマになったのも、至極当然のお方でした。吉沢亮は美しすぎるけれど、ツルッとしていると言うのは共通点かも、笑。
現代語訳も買ってみました。読むのが楽しみです。