2020年、色々あったけれど終わりよければ全てよし、ハピネス全開にさせてくれた、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称チェリまほ)」。
最終話を前に、ドラマ11話の感想を書き留めたいと思っています。なお、この感想はチェリまほ11話までを観ている前提とし、原作5巻のネタバレを含み、一部の方に不快な表現もあるかも知れません。一意見としてご容赦ください。更に、長いです。金曜早朝にタブレットで観た直後の感想と、現在の感想は異なっていますので、感想は2パートに分かれています。最終的な感想は、ドラマの展開に好意的になっています。
チェリまほ11話感想
ドラマ11話視聴直後
Twitter等々で叫ばれているように、安達くんが黒沢さんに魔法使いである事を告白した後の展開が原作5巻と全く異なっていることに動揺を隠せないでいます。まさか、一時的とは言え終わり(”別れる”とは言っていない)を選ぶなんて(涙) 、金曜日は大ショックで平静を装うのに必死な状態でした。11話はいつにも増して短く、体感5分、いや5秒で終わりました。いつもはウキウキするエンディングテーマも、黒沢の後ろ姿だけの予告も切ない(今思えば、最終回の情報一切遮断する、良い手法です)。
ドラマの黒沢さんも、安達くんの能力を理由に引くはずないと思ってましたが、安達くんが殻に閉じこもっちゃいましたね。コンペのプレゼンで寺島企画部長の心の声を利用してしまった罪悪感とか色々耐えられないという流れは、分からないでもないです。しかしながら、恋愛ドラマテンプレとしての最終回直前の山場なら、そんなの要らない。辛いのは6話で十分、と思ってしまいました。前回はあと半分残っているという事で期待が高まりましたが、今回は更に胸が傷んで終わりました。
次回最終話、30分未満で、お互い頭を冷やす時間、やっぱり好き、相互理解、キス又はその先へ、と視聴者が満足する内容で綺麗に終わるのか、時間足りないのでは?せめてキスシーンがないと、ファン達死亡フラグ、脱魔法使いは2期とか映画に持ち越し?
10話までは、ドラマチェリまほスタッフはファン達が何を嫌がるか何を喜ぶか分かってるー、むしろ斜め上過ぎて最高!と思ってたのですが、最終回直前でテンプレ的なひと騒動なくても良いのになぁ、と正直思ってしまいました。あれだけ仲良しだったのに、安達くんも人間的に成長してるし、ちゃんと整合性取れてる?と心配になりました。我々の予想を覆す最終回になることをひたすら期待するしかないです。
そもそも、11話予告と原作5巻の流れから、「教えてくれよ」「分かった」のやり取りで、最終回直前にアダルトな流れきちゃうかもと期待してたので、落差が激しすぎたのですね。ですね、せめてファーストキスは来ると思ってました。原作者様はドラマ化の際に、スタッフに5巻と6巻のプロットを渡したと仰っておりましたし。
複数回視聴後
あれから、ショックを受けたファンを気遣い、原作者様本人が登場人物の気持ちを代弁してくれたり、安定の横川氏の感想を読んだり、ニコニコ動画の公式2次会動画のコメントを観たりしているうちに、金曜早朝3時にタブレットで見た時とは違った味わいが出てきました。
漫画よりドラマの方が、安達くんが芸術肌で繊細で、安達くんの黒沢さんとのラブストーリーと並行して安達くん本人の成長を濃く描いてる気がします。
黒沢さんも漫画よりドラマの方が、更に繊細で安達くんに優しく愛が重い(片思い期間7年)ですね。
これらは、製作側の意図だけではなく、赤楚衛二さんと町田啓太さんご本人の本質も強く影響している気がします(つまり、演者さんご本人のハマり役という事)。
魔法の告白の場面も全然前提が違ってましたね。原作では黒沢さんの勘違いからの軽い嫉妬で、安達くん本人はいたって冷静でしたが、ドラマでは安達くんが仕事においても黒沢さんの関係においても魔法がなければ自分の中身が空っぽである事を暴かれてしまうのではないかという絶望感に苛まれており、黒沢さんは安達くんの気持ちを一方的にぶつけられてしまったので十分に理解できず、自分が安達くんにとって重荷なのではないかと自ら身を引いてしまっています。終盤の黒沢さんの心の声と、安達くんのモノローグの不協和音に、心が痛くなりました。
赤楚さん演じる安達くんはとても可愛らしく魅力的ですが(あの黒沢さんがメロメロですからね)、物語の中では特徴のない所謂一般人の役割を担っています。おこがましいですが、私も自己評価が低めで豆腐メンタルなので、一般人としての安達くんの気持ちが痛いほど伝わってきました。
魔法を手に入れ、黒沢さんの気持ちに触れ、優しい同僚の本音に触れ、黒沢さんに思いを告げて付き合って、後押しされてデートやコンペにと色々チャレンジして順調に見えたけれど(黒沢さんの愛は本物だけれど)、世知辛いヒエラルキーと実力が無いことを思い知らされて、取り繕ってた部分が暴かれてしまったみたいな感じでしょうか(本当はすごいよ、安達くん)。よほど強靭なメンタルが無い限り、仕事上での評価面談やプレゼンとかで一般人が受けやすいメンタルダメージそのもので、安達くんは自己投影しやすいキャラなのだと思います。仕事で大きなダメージを受けたら、そりゃプライベートにも影響するでしょう。しかも、魔法を不正に(デスノートとかに比べたら、可愛いものです)使った後ろめたさで、自己嫌悪ダメージ倍増。
自暴自棄の脱童貞作戦を試みるも、魔法で黒沢さんの望みを知った上でカマトトぶって利用しようとする自分の醜さに、さらにダメージ。あの状況でアダルト展開とか安達くんには耐えられそうにないです。柴門ふみ的な展開なら、なし崩し的にベッドシーンでしょうね。
なので、あの展開は、流石だったなぁ、と思えるのです。オタクは自己評価低い人が多いので、安達くんにかなり自己投影する人、多い気がします。
安達くんも、辛いですよね。これまで1人でもそれなりに楽しんで生きてたのに、そこに恋愛の楽しさが加わってまた違った角度からの幸せを経験してこれも良いなー、というお花畑期間が過ぎて。恋愛はそれだけじゃ無いですからね。仕事も含めてジェットコースター展開とか、そりゃキャパオーバーになります。
一方で、黒沢さん、優しすぎるというか、安達くんへの愛が深すぎて重すぎて、目が笑えてない演技すごかったです。外では何でも完璧にこなせるように見えて、安達くんには子供のように甘える黒沢さん。これ、ちゃんとフォローしないと精神的に崩壊しそうなやつです。魔法が使える安達くんと情報が非対称過ぎて、あの怒涛の展開は、黒沢さんの優秀な頭脳でも理解できないですよね。黒沢さんの演技は、情報知らない前提で理解しないといけないんですよね。それが表情と些細な身体の動きだけで伝えられる、本当に演技力が神がかっています。
安達くん大粒の涙と黒沢さんの溢れ出る直前の涙、本当に美しかった。お互いを気遣い過ぎてるのが伝わりました。ドラマはト書き部分も演技で表現しないといけないだろうと思いますので、今回の役者さんたちはそこまで理解して我々に伝えてくれて凄いことだと思います。監督さんと脚本家さんと、色々突っ込んで練り上げたのかもしれないですね。
伏線のすごさ
人の気持ちが分かる魔法がこんな伏線になるとは、序盤では全く想像もできませんでした。
でも、よくよく観てみれば、書き下ろされたオープニング「産声」の歌詞全てが、自分で引いた停止線で踏み止まっている安達くんに繋がっています。
オープニングで黒沢さんが作ってるお弁当が、プレゼン前の愛情弁当だったとか、第1話の自転車で坂を駆け上がる安達くんが最終回に繋がっているとか、ちゃんと逆算して全てを表現されています。ラブコメ(それもジャンル上、BLで超深夜帯)でここまでカタルシスを感じることって中々無いと思います。
まとめ
ファンとしてはずっと2人のラブラブな掛け合いを悶絶しながら観ていたかったとも思いますが、ちゃんとドラマの起承転結(最終回直前で波乱)や伝えたいメッセージ(大切なことは言葉で伝えよう)が計算されてますよね。11話を振り返ってみると、神回だなという印象です。というか、毎回、神回を更新してくれています。
男女と同じで、付き合うとか結婚がゴールじゃ無いという事がちゃんと描かれていて、ファンタジーな設定なのに妙に生々しいです。魔法とか関係なく、黒沢さんが安達くんのことを愛して必要としていること、安達くん自身も黒沢さんを必要としていることに気づけるとよいですね。
脱童貞後も、シーズン2以降もちゃんと描ける骨太な背景作りだと思いました。何食べみたいに、年齢層ごとに課題ありますから。
とにかく、今は最終話で2人が幸せな選択をすることを願っています。
Blu-ray、もちろん予約しました。