読書・ドラマ感想

湊かなえ「人間標本」感想

湊かなえの新刊「人間標本」読了。薄い本なのに3週間かかりました。

読み始めはとにかく胸がざわついて中々読み進められず、冬休みを理由に離れたりもしたのですが、後半は一気読み。以下、ちょっとネタバレ含みます。

ザワツキの理由考えてみました。タイトルそのまま、猟奇殺人の中でもかなり倫理的にダメな感じの犯人の独白から始まる。エグくはないものの、タイトルそのままの描写も狙いすぎ。しかも犯人の来歴と心理描写が整合しない感じが湊かなえっぽくない。素人小説みたいな陳腐な犯人像なんで、ちょっと大丈夫かなと心配になる。

こんな感情って誰しも持ってるよね、ちょっと踏み外すとこんな怖い展開になるのか、というヒヤッとする表現がイヤミスの女王たる湊かなえじゃなかったか。この犯人像?えっ?てなるじゃないですか。

でもそこは狙って下げて上げようとしていたのか。やっぱり中盤から巻き返すんですよ。二転三転、そして、意外ながらも、あーやっぱり、だってあの段階から大きなアクリルケース用意してるとか犯人あの人しかいないじゃないか、って最後は畳み掛けられました。

相手を想うあまり悲しい結末を迎えるという意味では「Nのために」を思い出し、少年犯罪(結局ダミーでしたが)という意味では「告白」っぽさもあり。

そういえば、東野圭吾の新作「あなたが誰かを殺した」も、犯人は未成年でした。「さまよう刀」のような不良少年じゃないですよ、ごく普通そうな可憐な少女。最近の流行りなんですかね。初っ端から面白く、ベタだけどこういうシチュエーション待ってたよ、って感じの娯楽小説でした。