読書・ドラマ感想

読書感想:ガクサン

佐原実波による学習参考書コメディ漫画で、モーニングで連載されています。2022年8月現在、2巻まで刊行されています。

丸の内丸善で見かけ、サンプルを読んで面白そうだなと思い購入しました。

参考書の出版社に中途入社した茅野うるし。そこで出会ったのは、クセが強すぎる参考書オタクの福山だった。その行動は社会人としては失格なことばかりだが、参考書の知識は尋常じゃないようで、、、。参考書オタクとサブカルミーハー女の、凸凹お仕事コメディ(公式サイトより引用)。

英語の参考書を探して悩んでいる風の有名私立中学校の制服を着た生徒に対して、「大人になれ」と言い放つ福山。中学受験までは親の敷いたレールに沿って勉強していればよかったが、これからは自分で勉強方法を確立し、進路も選んで行かなければならない、これは子供にはできないことだ、とストレートに言い放つシーンが印象的でした。

実在の参考書の活用法が出てくるので、学生さんにはリアルタイムで役立ちそうですし、大人は学生時代に使った参考書あるある話に懐かしさを感じることでしょう。

学習参考書の製作裏話や独学における学習参考書の効果的な使い方も学べる、実用的な漫画です。テイストは異なりますが、「ドラゴン桜」や「二月の勝者」と類似したジャンルだと思いました。

福山は塾には行かずに独学で一橋大学に合格したという設定ですが、教育熱心かつ潤沢な資金力を持つ親のもとで育った子供との同じ土俵で戦わなければならない、残酷な教育格差についても述べています。そして、その格差を埋める手段の一つが学習参考書だとも言っています。

一方で、学習参考書があれば独学で上位の大学に入れるかというとそれはかなり難しく、自分のレベルと目指す学校のレベルに合わせて参考書を選び、自力で微調整できることが条件と言っていました。

必然的に、地頭が良い子供が独学での合格を手にしやすいのです。ただし地頭や要領がよくないと独学合格は無理なのかというと、必ずしもそうではなく、その道筋を示してくれるバイブルといういべき存在が「赤本」なのだそうです。

目指す大学が決まったら、まず赤本に目を通し、過去問の傾向や範囲、合格者の使っていた参考書などを見て、自分が持っている参考書がそれにあっているかどうかを常に自問自答しながら、目標に向かって自分で勉強の計画を練ることができる子が独学を制す。学生時代の経験を踏まえても納得の内容でした。

大人にも役に立つと思ったエピソードは、福山の「勉強するためにやる気を出すな」という耳の痛い台詞。勉強は歯磨きや入浴などのように習慣化すべきで、やる気を出さなくても息をするようにようになるべし、ということです。勉強が好きな人は勉強を苦とは思っていないですから、その時点でアドバンテージですね。勉強に限らず何かを極めた人はこの類でしょう。ある行為を努力を思ってしまう時点で、苦ではない人と心理的にも圧倒的な差がついています。習慣化こそ最大の武器なのかもしれません。

コメディテイストながら、しっかりとした取材に基づく読み応えのある内容でした。